2017年12月14日木曜日

人の集う神社に ~ 丹生川上神社上社宮司の挑戦

川上村では、色んな人が参加しながらホームページを使って情報発信する「 むらメディアをつくる旅 」を開催しています。今回は丹生川上神社上社の宮司・望月康麿さんを取材し、取材に参加した4名(小田芳美さん、鍛冶秀生さん、斎藤はる香さん、福井崇生さん)が記事を作りました。川上村のホームページには鍛冶さんの記事を代表例として掲載しています。本記事では、福井さんが作った記事を掲載します。


人の集う神社に ~ 丹生川上神社上社宮司の挑戦


ライター:福井崇生(むらメディアをつくる旅参加者)


川上村にある実はスゴい神社



丹生川上神社上社の「ご参拝のしおり」表紙に書かれた「元官幣大社」という記載。実はこれ、かなりスゴいことだ。神社には「格」があり、官幣大社というのはその最上位に位置する格のこと(社格制度は第二次世界大戦後に廃止)。元官幣大社という肩書を持つ神社は、奈良県内でも春日大社や橿原神宮など9社しか存在しない。

奈良時代に建立され、朝廷との関係も深かったという丹生川上神社上社。その歴史を知ったうえで訪れると、「あれ?」という違和感を覚える方もいるかもしれない。

境内に足を踏み入れて、まず感じることは、「新しい」ということなのだ。実はこれには訳がある。もともと境内のあった場所は、大滝ダム建設に伴い水没を余儀なくされてしまった。そのため、現在の丹生川上神社上社は、1998年に遷座したものだからだ。ダム建設のために遷座して山の上にいった、なんていう元官幣大社はそうそうあるもんじゃない。


境内でビール飲み放題!?


そんな由緒正しい丹生川上神社上社で今年5回目を数えたイベントがある。それが神社境内で行なわれる地域住民の交流会だ。この交流会ではなんと、ビールが飲み放題。村の活性化のために始めたというこのイベントには、宮司こだわりのアイデアが詰まっている。その一つが、参加者全員がマイクをもって一言しゃべるというもの。これによって、普段あまり接することのない人たちが、神社での出会いをきっかけに、話をするようになり親しくなったという。

また、この他に毎年神社主導で開催している行事として「新年賀詞交歓会」がある。老人会などさまざまな会で新年会が行われているが、これをまとめて神社で開催し、村長をはじめ役職や所属に関係なく集まってもらおうというもの。村の主催ではなかなかできないので、毎年開催してほしいと村長からお願いされるほど、さまざまな人たちが参加し、交流が生まれる欠かせない行事になっている。


天空の杜で龍神様を感じる

境内を歩き、拝殿で参拝をすると気づくことがある。「新しい」だけでなくとても「清々しい」のだ。ここにも宮司のこだわりがある。お寺には仏像などがあり、明確なメッセージを受け取ることができるが、神社はそうではなく「感じる」場所。だからこそ参拝する人が清々しさを感じ、何かを感じることのできる雰囲気づくりを心掛けているという。

丹生川上神社上社の主祭神は高龗大神(たかおかみのおおかみ)。山の峰の龍神で水や雨を司る神様だ。訪れた参拝者の中には、龍神様の気を感じたという人も多く、「護られている気がする」とか「夢に現れたために訪れた」と話す人もいるということで、パワースポットとしても知られている。

神社の眼下に位置する大滝ダムには霧がかかることも多く、本当に龍神様がいまにも現れそうな神々しさを感じることができる。


宮司・望月さんの思いとは

奈良県外からIターン(出身地とは別の地方に移り住む、特に都市部から田舎に移り住むこと)として丹生川上神社上社の宮司に就任し、今年で6年目を迎えた望月さん。望月さんの信念の一つは、神社というのはつながり、出会いの場でありたいということ。先の境内での交流会もそんな信念に基づくアイデアだ。

一見すると、境内でビールとは不謹慎な!とも言われかねないイベントだが、神社というのは本来、参拝だけでなくお祭りや芸能なども行われるなど、人が集うところ。人に来てもらえない神社は役割を失ってしまう。現代における神社のあり方の第一歩として、まずは村の人たちはじめ、多くの人たちに来て欲しい。そして、丹生川上神社上社の素晴しさを知って欲しいというのが望月さんの考えだ。

望月さんの目下の最大の目標は、来年520日に行われる遷座20大祭。さまざまな奉納の踊りや音楽も予定しており、神職に携わってきた中での集大成と位置づけているという。

伝統を守っていくだけではなく、時代に合わせた形で人々の生活に寄り添い、共に神社の歴史を築いていきたい、そんな望月さんの思いが感じられる丹生川上神社上社に、足を運んでみてはいかがだろうか。

取材してみて感じたこと

望月さんのお話は、記事にできない内容も含めて、とにかく伺っていて楽しかったし貴重な内容だった。困難に立ち向かう時や、新たな挑戦をする時には「楽しみながらやる」。そして人を「楽しませる」。その姿勢は取材中も貫かれていたように思う。

また、イベントなどで、さまざまな人を巻き込んでいくやり方も非常に印象的だった。多くの人と率直に意見を交換しながら協力していくことで、活動はさらに大きくなり、さらに多くのつながりを生む。そうした前向きに取り組む気持ちの積み重ねが周りにも影響し、神社で感じる清々しさとなり、伝統をも作っていっているのではないかと思った。

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